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成年後見制度を利用する場合の注意点|申立てや後見人の権限、負担に関することなど

成年後見制度を利用する場合の注意点|申立てや後見人の権限、負担に関することなど

2022/11/10

成年後見制度は、判断能力が低下したり欠いてしまったりした方にとって大事な制度です。法的な保護を受けることができるようになり、散財や詐欺などによる被害が防ぎやすくなります。
ただし一方的に恩恵が得られるだけではなく、一定の負担も負うこととなります。特に後見の対象となる本人の家族等は、成年後見制度の申立てから終了に至るまで費用や労力などを要することとなりますので、あらかじめ制度についてよく理解しておくことが望ましいです。
制度の詳細まですべて理解するのは難しいと思われますので、ここでは“成年後見制度の利用にあたり特に押さえておくべき注意点”として要点をまとめていきます。

後見開始の申立てには費用と時間がかかる

成年後見制度を利用するためには、まず、後見開始の申立てを家庭裁判所に対して行わなければなりません。

そしてその申立てをするのにも費用はかかります。
例えば申立手数料や登記手数料、郵便切手代などは必ず発生する費用です。これらに関しては合計でも数千円程度で済みますが、裁判所から「鑑定」を求められるケースでは10万円~20万円が追加で発生します。
また必須ではないものの、司法書士等の専門家に申立ての相談や代行を依頼するケースも多いです。このときには別途専門家への報酬も発生します。報酬の内容は依頼先の事務所によっても異なりますので、依頼前によく確認しておきましょう。

成年後見制度は届出をしてすぐに開始できるものでもありません。申立て後、裁判所による審理を受け、後見開始の決定を受けてからでなければ開始されません。
そして申立てから後見開始までには通常1,2ヶ月を要します。事案や裁判所の混雑具合によっても変動することがありますが、月単位で時間がかかるということは覚えておきましょう。

申立て後の取下げには許可が必要

申立て後、提出された書類の内容を確認したり親族への意向照会が行われたり、申立人等の対応すべき事柄がないわけではありません。また、後述するように後見人に選ばれた方は長きにわたり責任を負い続けることとなります。

こうした大変さや負担に関して、申立て後に不安を感じることもあるかもしれません。
しかし、いったん後見開始の申立てをしてしまうと、これを取り下げるには裁判所の許可が必要となります。
そのため深く考えず申立てをするのではなく、「本当に成年後見制度の申立てを今行う必要があるのか」「他に適している保護制度はないのか」と吟味することが大切です。他の制度も含めた幅広い視点から検討をするためにも、専門家に相談してみましょう。

後見人の思い通りに財産の処分ができるわけではない

成年後見制度の目的は“本人の保護”です。判断能力に問題が生じた本人の家族等が、本人の財産を自由に処分できるようにするための制度ではありません。本人の利益を最優先し、そのために後見人等を付けるという制度です。

そのため「○○(本人)が所有している不動産を処分したい」という理由などで申立てを行うケースもありますが、その処分が本人にとって必要であること、手段として相当であることが求められます。
当然、本人の財産を処分したことで得られたお金についても後見人や家族が自由に使えるわけではありません。他方、本人の医療費にあてたり介護施設への入所費用にあてたりするのは問題ないでしょう。

裁判所の許可が必要になることもある

処分したい本人の財産が自宅である場合には要注意です。

自宅を売却するときには裁判所から許可を得なければなりません。
そして許可を得るには「何のために自宅を売りたいのか」を示さなければならず、本人のためにならないと判断されれば売却できません。

特別代理人の選任が必要になることもある

成年後見制度を利用している状況下で相続が発生し、後見人と本人が共同相続人になることもあります。
誰がどの財産をどれだけ取得するのか、遺産分割協議で話し合って決めていくのが基本ですが、この場面では後見人と本人の利益が対立してしまいます。後見人が、本人の相続分を少なくし、自分の取り分を多くするということも不可能ではありません。

そこで、後見人に代わり本人を代理する「特別代理人」を選任することになります。家庭裁判所に申立てて選任をしてもらうのです。
遺産分割協議のみならず、“後見人自身の債務の担保として、本人が所有する不動産に抵当権を設定する”ような、利益相反行為を行う場面では特別代理人の選任が必要になります。

なお、後見監督人が選任されている場合には特別代理人の選任申立ては必要ありません。後見監督人が本人を代理することになるからです。

後見人は長期にわたって負担を負うことになる

後見人として選ばれた方は、本人のために様々な仕事を行わなければなりません。勝手に止めることもできません。
例えば後見開始の申立て時点で遺産分割協議や不動産の処分、預貯金の解約などが課題となっていたとして、これらが処理できたからといって成年後見制度を終了させられるわけではありません。

基本的には本人が亡くなるまでの期間、制度に沿って保護をし続けなければならないと考えておくべきです。

しかもその間、裁判所に対する定期的な報告もしなければなりません。本人の財産をどのように処分したか、口頭で簡単に告げるだけでは不十分です。収支報告書、財産目録を作成するなどしてきちんとした形で報告ができなければなりません。

候補者が後見人になれるとは限らない

後見開始を申立てるとき、後見人候補者をあげることができます。
本人の配偶者や子などを候補者とすることも珍しくありません。

しかし、候補者が後見人になれるとは限りません。
最終的には裁判所が判断して後見人を選任します。もちろんその判断にあたっても、“本人の利益を考えたとき、誰がふさわしいか”がポイントとなります。そのため候補者が財産管理を適切に実行することが難しそうだと評価されてしまうと、別の人物が選任される可能性は高くなります。

本人の財産額が非常に大きい場合や複雑な場合も同様です。その分仕事量が増え、難易度も増しますので、候補者に特段のマイナス要素がなかったとしても専門家が選ばれる可能性は高くなります。
なお親族以外で選任される場合、司法書士など法律に精通した専門家が選ばれることが多いです。申立て人が自ら専門家に依頼して候補者として立てることも可能です。

後見監督人や後見制度支援信託が必要になることがある

仮に希望通り候補者が後見人になれても、後見監督人がつくことがあります。

後見監督人は、後見人の職務のサポート・監視などを仕事とする者であり、専門家の中から選任されるのが一般的です。後見監督人がつく場合、後見人がする一定の行為に関しては後見監督人の同意が求められます。

後見監督人とは別に、「後見制度支援信託」の利用を指示されることもあります。
本人に多額の財産がある場合、一挙に全権限を後見人に与えてしまうとリスクが大きいです。そこで日常生活で必要とされる財産だけ手元に残し、その他は金融機関に信託するという運用方法が採られることもあるのです。

後見人等に対する報酬が発生する

後見人は制度に則り仕事を行いますので、それに対する報酬も発生します。
家族等身近な人が後見人となるケースでは無報酬としているケースもありますが、後見人の負担は大きいですし、適切な財産管理等を期待するためにも報酬は発生するものと考えて制度利用を検討すると良いでしょう。

特に専門家への依頼時には報酬が発生するのが通常です。
報酬額は個別の事案に応じて異なりますが、目安は月に2,3万円です。

成年後見制度以外も検討すべき

本人を保護するための制度は成年後見制度だけではありません。「家族信託」なども有効となることがありますし、成年後見制度にも事後的に申立てを行う「法定後見制度」のほか、事前に本人が任意後見契約を結ぶことで利用できる「任意後見制度」もあります。

成年後見制度以外で対処する方が適している可能性もありますし、専門家との相談を通して最適な手段を模索することが大切です。

早期に対応するほど選択できる手段も多くなりますので、現時点で保護の必要性がなかったとしても、将来起こり得る問題に対処するため一度検討しておくことが推奨されます。

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